庵主闘病記
一個人として、真言宗僧侶として、自身に起きた出来事や経験をここに綴っていこうと思います。
最後までご覧いただければ幸いでございます。
奥本 兼昭
長らくの喫煙生活に終止符を打ったのは、吐き気を催すくらいの咳が2週間も続いていたからでした。咳もですが、痰。
ひどいときには、一週間くらい毎晩ティッシュ箱の半分使ってしまう程出ていました。
咳が出はじめてからすでに2ヶ月程経過していたので、かかりつけの病院を受診することにしました。(この時、禁煙から約7ヶ月経過していました)
通常通りの問診や診察をし、結果を聞きます。
肺気腫ですね
また一か月後に来てください
※肺気腫…メディカルノート引用
何故か、もやもやとしたモノが払拭できず
念のために、専門のとこで診てもらお
なんもなかったら、元のお医者さんとこいけばいいし
そんな気持ちで他の病院を受診することにしました。
問診、検査。そして結果を聞きます。
診察室に貼られた、さっき撮った胸辺りのレントゲン写真。医学知識のない私にでも確認できるくらい
“ ぽつん ” とあります。
白い影・・・
何これ・・・
と思うと同時に告げられた。
癌の可能性があるので、詳しい検査をした方がいいでしょう
そこから 検査・検査・検査…
(ここでの検査数が一番多かったと後になって思います)
そして結果は…
やはり癌です
「なんでやねん!!!!」
それしか出てこない。
ありきたりかもしれないけれど
なんで…
なんで…
なんで…
周りのアドバイスや、いろんなサポート、師僧がかかりつけ医を紹介下さったこともあり、他県でのセカンドオピニオンを受けることにしました。
受診した他県病院でも検査をしましたが、そこで大きな病院への紹介状を渡されました。
※紹介された総合病院の初診外来受診は、原則として他の医療機関からの紹介状が必要で、まずは近隣の医療機関での診察が必要となるとの事でした。(ただし緊急性のある場合は別です。)
その地域では3本の指に入る大きな総合病院。そこでも数々の検査をします。
内視鏡で癌細胞を摂取して、癌センター?みたいなところに送り
PET検査
内視鏡検査
外科での手術説明
(一応手術説明はありましたが、どんな結果であっても私は手術を受ける気はありませんでした)
この頃
私にとって必要な重要な検査をしているのは重々わかっているのだけれど、、、正直なところ検査疲れ、、、状態でした。
そして、診断結果が告げられました。
・ステージⅢA
・2ヶ月の入院
・治療方法
・週1回の抗がん剤治療
・週5回の放射線治療
入院日もこの時に伝えられました。
Ⅰ期...癌が肺の中に留まり、リンパ節への転移はない状態。
Ⅱ期...リンパ節転移はないが、肺の中の癌が大きい、又は、同じ側の肺門リンパ節に転移している状態。
Ⅲ期...肺の周りの組織や重要な臓器に広がり、リンパ節にも転移している状態 →→私はここ。
Ⅳ期...離れた臓器に転移していたり、胸水にがん細胞がみられる状態。
数字が大きいほど、また、同じステージではA、B、Cの順にがんが進んでいることを示しています。
病状に関する資料はがん免疫.jp より引用
2019年8月1日入院。
入院2日後には、第1回目の抗癌剤治療から始まりました。
まず驚いたのが看護師さんの服装です。
白いつなぎみたいな、すぐに脱着・取り外しができるビニール製で、顔・マスク・目の個所が、透明のシールドになっているコロナ治療にあたる医療従事者の映像でみるあの完全防護服に似ていました。
抗癌剤の液体が、目や皮膚に付かないようにしてるのかな
いざ投与が始まった時
、、、!?そんな液体を体に入れる、、、!?
看護師さんの姿と、今から投与される“ソレ”を見て、私の顔には“驚き”と“戸惑い”が出ていたのでしょう。
奥本さん。
治療の事で、いろいろ、厳しい説明受けたでしょ。その全部が、奥本さんにあてはまるわけではないですし、何かあればナースステーションで対応するので、安心して治療を受けて下さいね。
自分にとって大きい一言でした。
その時の看護師さんの笑顔も。
いよいよ点滴開始…。
担当医さん・看護師さんも、20~30分毎に様子を見に来てくださいます。時間は、抗癌剤投与と、他の点滴(約1時間)を含めて3時間位だったように思います。
点滴中は、特に注意深く、担当医さん・看護師さんとも様子を見に来て下さいました。
抗癌剤を投与し始めると、体がポカポカしだします。例えるなら、少しお酒を呑んでいる感覚です。そして睡魔が襲って来ます。
ですが、担当医さん言われてしまいます。
寝てしまうと体に変化が起きたとき、判らないから頑張っておきてて下さいね
何事も無く終わった…
というのが本音。
入院してからは、正直、色々考えてもしょうがない。とにかく乗り切るしかない、考えてもわからないし、不安になる、、、そんな状態でした。
・毎週月曜日、木曜日採血があります。
・抗癌剤開始後、1週間~10日位で副作用が「必ず」出ます。
・血液検査項目中、何項目かの数値が、下限値を下回ります。
・場合によって輸血の処置もあります。
1回目の抗癌剤治療後の採血で何項目かの数値が下がりました。
2回目の抗癌剤治療後の数値も下がりました。
来週の抗癌剤治療で、また(下限値より)下がるんやろうな、、、
そして、3回目の抗癌剤治療。
その後の採血があり、看護師さんが結果を持ってきてくれるのですが、検査結果の紙を私が見る前に
奥本さん、数値が上がってますよ
と教えてくれました。
《え??》
《良かった~》
驚きと安堵が入り混じり湧いてきたと同時に、慈明庵のお不動様・父・母の顔がよぎりました。
副作用が全く無い
一般的に副作用で知らせているのが
・体重減少
・嘔吐
・脱毛
・口内炎
・手足のしびれや痛み
などですが、何もありません。治療前と後に変化はありませんでした。
看護師さんから
この感じやと食事の量も、足らんのとちがう?
と、病院食を増やせるか調べてくれました。
結果、増えませんでしたけど(笑)
私は、独身で今回の癌治療を始めるにあたり、身の回りのこと、通院、その他も多方面で師僧はじめ、たくさんの方々のお力添えを頂き、頼らせていただくことで治療に向き合い専念する事が出来ました。助けていただいた皆さまにこの場を借りて改めて感謝申し上げます。
入院を控えた2019年7月31日。
今、振り返って思うのは、抗癌剤治療のときに家族が付き添でつけるのならば、ついてあげてほしいなということです。
入院すると、自由な時間が多く、買ったまま読んでいない本を読みました。
修行者にとって
病中は、最大の業である
この闘病が業であるのならば
やらせていただきます
放射線治療についても少し書いておきます。
放射線治療は、週に5回、月~金曜日まで。
時間的には、5分位。
放射線治療の副作用は、治療した場所に生じるため、癌の範囲や場所ごとに異なります。
・食道の炎症による嚥下障害
・気管支や肺の炎症による咳や発熱
・皮膚炎による皮膚の発赤や痒み
通常、治療終了数週間で症状は消えて、全身への影響はありません。
ちなみに、私は放射線治療に関しても、やはり痛みや副作用もありませんでした。
入院中、同室の患者さん(2~3名)も癌患者さんです。
よく同室になると交流があったりしますが、そんな状況ではありません。
病室では、皆、昼間でも、カーテン閉めてました。
全く食事のとれない方、一晩中の嘔吐を繰り返す方、昼夜問わずかなりしんどそうで、本当に辛そうでした。
私だけが至って普通で、全く副作用が無いことに、何故か申し訳ない気持ちになってしまいました。
今思うと、死と向き合う所に居たんだと、あらためて感じます。
当初予定された入院中の治療計画も滞りなく終わり退院の日が決まりました。
予定の半分終わりましたね
奥本さん。
とうとう、副作用無かったですね。
副作用の無い方って結構いらしゃるんですか?
男性では初めてですね。この病院初まって2人目で、もうお一人は、乳癌の方で、食事の量が増えて困ったそうですよ。
何で、そんなに元気なんですか?奥本さんにとって、こんな抗癌剤、どうってことないって感じなんですか?
2019年9月25日退院。
これからの治療として
・通院で約1年間の免疫療法の継続
・退院翌月1週間の予定で入院し、免疫療法の点滴
とのことでした。
10月にふたたび入院し、免疫療法実施。副作用などが無いか、確認し退院となりました。
必ず出ると言われた副作用もなく、放射線治療でも痛みなども無いままでした。
11月からは、通院で月2回の免疫療法の治療になりました。その間も体調に大きな変化はありません。
強いて言うならば、退院後、免疫療法4回目位から、放射線があてられた肺の部分が予想よりも広く白く広がり、免疫療法を1ヶ月ほど様子を見るため中止になりましたが、中止から1ヶ月後のレントゲン検査では、白い影は小さくなってくれたので免疫療法の再開となりました。
それから一年。コロナ禍での通院。
2020年9月。予定された免疫療法も終わりました。
今後3ヶ月に1度の定期検査。
そして約5年経過観察となります。
5年です。
短いのか長いのか、、、今考えないようにしてます。正直考えると動けなくなってしまうからです。
今回、癌を経験して思うこと。
告知後、担当医者から強く手術を進められました。
肺腺癌で、手術できるのは、不幸中の幸いですよ、90%が手術出来ないんですから
と。ですが、私は決めていました。
手術はやらない
この状態で、行くとこまでいく!
(なぜそう思ったのかわかりません)
癌の治療で手術というのは、諸外国ではかなり少ないみたいです。
日本は外科の技術が高い為、手術を進めるみたいですけど、、、。
ある方から言われました。
一度治療方針を決めたら
後ろを振り向かない
告知された時、落ち込み、自分では、動けない状態になりました。
《病は気から》の言葉は本当に大事だと身をもって感じています。
今の私があるのは、周りの方のおかげです。
もし、どなたか、そのようなかたがおられたら、どうか手を差し伸べてあげて下さい。
気丈に見えても、心が固まり、時間が止まり動けなくなっているかもしれません。声掛けでもよいです。寄り添ってあげてください。
私自身も今思うと入院中、自分だけ時間が止まっているような気持ちになっていました。
日々進歩している現代医学なので、治療薬等も良いものが出来ています。
気持ちで、決して負けてはいけません。
「人は癌だから亡くなるのではなく、いずれ必ずその時がくる」
癌を経験した私個人が想ったことです。
後、ストレスですね。医者からも注意されてますけど、やはり人間関係です。
一緒にいることで互いが、幸福を感じられ、心が休まり、共に笑え、元気になれる。
仕事が上向きになるようなアイデアや利益を分け合い、高め合える。嘘や偽りは必要ありません。
有形無形の価値を生み出すことができ、同じ方向や目標を見て歩めるかどうかが大事だと思います。
一緒にいる価値を見出せる関係かを知るには、自分の経験値と本心しかありません。
限られた時間と命を削ってまで、惰性や馴れ合い、しがらみ、妬み・僻みなど、ストレスと揉め事を生むような、マイナスのモノは断捨離したほうがいい。何の徳もないのですから。
今後、私にできる事、私だから出来ることは何なのか、模索しながら、一つ一つ真摯に向き合って、この経験を活かしたお勤めをさせていただきたいと思っております。
長文、最後までお目通し下さいまして心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。